私が札幌の裁判傍聴を始めた時に、1番気になったのがそこで働く方たちの相関関係でした。

ニュースやドラマでは、なんとなく目にしていますが…
裁判官・検察官・弁護士までは知っていても、実際に見分けるのは案外むずかしいですよね。
この記事では、初心者でも今日から法廷の空気が分かるように、私が実際に札幌で裁判傍聴を続けてきて気づいたポイントをわかりやすくまとめました。

法廷で働く人たちの基本構造
裁判傍聴でよく見るのは次の3つの職種です。
- 裁判官
- 検察官
- 弁護士
ここでは、その見た目の特徴や仕事の違いを中心に整理していきます。
トップオブ法廷!裁判官

見た目の特徴
- 黒い法衣(ローブ)を着ている
- 3段の席のいちばん高いところに座っている
- 登場した瞬間に裁判官だと分かる存在感

裁判官は3人体制で合議体。
合議体(3人裁判官)の基本構成
中央:裁判長(いちばんキャリアがある)
- 3人の中で最も経験が長い裁判官
- 裁判をリードし、判決宣告も基本的に裁判長が行います
- いちばん高い席の中央に座る
右陪席(みぎばいせき)
- 裁判長の次にキャリアがある(裁判長の右腕となる存在)
- 実務経験は中堅〜ベテラン(5年以上のキャリアが多い)
左陪席(ひだりばいせき)
- 3人の中ではいちばん若手であることが多い
- 新任1〜3年目の裁判官が入ることも珍しくありません

札幌地裁の場合、傍聴席から見て真ん中(裁判長)→左→右の順でキャリアが高いことが多いです。
裁判官は同時に複数の裁判を担当している!
意外ですが、裁判官は1つの裁判だけをやっているわけではありません。
午前は窃盗事件、午後は交通事故…と、時間刻みでいくつもの裁判を担当しています。
悪事を徹底的に主張!検察官
見た目の特徴
- スーツ(地味系)
- 青紫の風呂敷を持っている(これが最強の見分けポイント!)
- 調書の束と付箋の量がすごい

現代は普通にスーツを着ているので、一見弁護士との区別がつきません。
裁判所の入口から入ってくる姿を見ていると、手に青紫の風呂敷を持っている方が検察官です。
法廷に出る検察官と、調書を作る検察官は実は別!
意外と知られていませんが、捜査を担当する検察官(調書作成)と法廷で立つ検察官(公判担当)は違う人です。同じ検察官でも役割が分かれているんですね。

あのキムタク演じる久利生検事は、調書作成のために取り調べを行う方の検事です。
被告人の背景を考慮!弁護士
見た目の特徴
- スーツ(なんとなく仕立てが良い)
- なぜかキャリーケースを持参する人多い
- 被告人と会話を交わしている
検察官との見分け方は、風呂敷がある → 検察官、ない → 弁護士。
これでほぼ間違いなしです。
検察官より弁護士の方が身なりが派手?!
弁護士は「ボス弁(独立開業)」と「イソ弁(雇われ)」に大別され実際には給料の差はあるそうです。高そうなスーツは、信頼感を買うための制服の役割もあり戦略の1つなのかもしれません。

これまで見た中では、検察官の方が猫背でうつむきがち、寝ぐせがあったりする方が多い印象でした。(あくまでも個人の感想です)
ただし!
論告が始まると、検察官の方が倫理的によどみなくしゃべる方が多いです。(早口で声が小さい検事さんもいますが…)
弁護士は十人いたら十通りで、主旨からズレて裁判長から注意を受ける方もいたりします。
法曹三者は実は元同級生?
裁判官・検察官・弁護士は、全員いったん司法修習という同じカリキュラムの学校のようなところを経て法曹になります。
したがって実務に出ると、元同じ期の知り合いということも普通にあります。法廷でバチバチにやり合っていても、実はプライベートでは仲良しかも?

ちなみに修習生の9割は、弁護士を目指すそうです。裁判官になれる人(希望する人)は、その中でもごくごくわずか。
札幌地裁で気づいた発見
裁判官 × 検察官のペアが固定されやすい
札幌では事件の割振りの関係で、同じ裁判官 × 同じ検察官が何度も同じ法廷で顔を合わせるという状況をよく目の当たりにしました。
その結果、傍聴していると「あれ、今回の事件も同じペアだ」と思うことがあります。
ちなみに裁判官のシフトは固定されていて、それぞれ使用する法廷が決められています。
⇒札幌地方裁判所 担当裁判官一覧
検察官の数も多いわけではないので、必然的に同じペアになることが多いのかもしれません。
リアルな法廷は静かで粛々
ドラマのように「意義あり!」と怒鳴り合うような場面は、ほとんどありません。
法衣姿の裁判官が静かに全体をコントロールしながら、一定のルールに基づいた流れで粛々と進んでいきます。
ただし、現実の裁判の方が数倍も生々しいのは事実です。
1つの事象に対して、かなり具体的で回りくどい表現をします。
(いつ・どこで・誰が・何を・どうしたということを明確にし、すべて略語を使わずに正式名称で表現するのが法廷のルール)

したがって殺人事件や、性犯罪などは聞いていてツライ場面もあります。
意外に雑談も多い
時間がきたら(裁判官が入廷したら)厳粛な空気になりますが、それまでは保釈中の被告人と和やかに話している弁護士が多いです。
開廷前に交わされる会話を盗み聞き(普通に聞こえてくる)できるのも、傍聴人の特権です。
傍聴していると、裁判官・検察官・弁護士と目が合うことが多いです。関係者が来ているか、確認している模様。
ちなみに開廷前でも傍聴人同士の私語は厳禁!法廷に入ったら、静かに時間がくるまで待ちましょう。
法廷を守る影の主役たち
裁判に関わるお仕事の方は、他にもたくさんいらっしゃいます。
ここでは代表的な職員の方を紹介します。
書記官
- 裁判運営のプロ
- 黒い法衣をまとい、裁判官の前でパソコンに向かっています
- 進行・記録・書類管理のすべてをこなす
- 裁判官より手を動かしている
裁判所職員(守衛や事務なども含む)
- 傍聴席での案内役
- 傍聴券の抽選も担当
- 裁判所の門番としてセキュリティを守る
- すべての問い合わせ(相談)や、関係者の誘導を担う
- マスコミ対応など
刑務所職員(刑務官)
- 被告人と一緒に法廷へ
- 2人ペアで配置していることが多い
- 女性の被告には女性がつく
- 腰縄や手錠の開錠を行う
- 傍聴人の安全を確保する役目もあり

ちなみに、裁判官・検察官・書記官・事務官・刑務官はすべて国家公務員。
※他にも事件によって、通訳や鑑定士などが出席することがあります。また司法修習生が参加していることも。(審議には参加しません)
【法廷で働く人】よくあるQ&A
Q1. 日本の裁判官って木槌(バベル)を使わないの?

A. 使いません。
日本の法廷では静かに進行するのが基本で、木槌を使うことはありません。
「静粛に」トントンは海外のお話。
Q2. 裁判員裁判に選ばれるのはどんな人?
A. 有権者名簿から完全ランダムです。
選挙権のあるすべての人が候補の対象で、くじ引きで決まります。
(毎年11月に、候補者には『来年度、あなたを裁判所にお呼びする可能性があります』という書面が届きます。)
辞退理由があれば免除されることもあり、実際に参加するまでには何段階も選抜があります。
Q3. 資格がなくても裁判所で働けるの?
A. 働けます。
司法資格や国家公務員試験不要の職種もあります。
受付スタッフや臨時職員を募集していることもありますし、裁判所内の売店(コンビニ)・食堂・清掃スタッフなどをパート募集していることも。
Q4. 裁判官や検察官は転勤多い?
A. とても多いです。
全国を数年ごとに動くのが基本。
札幌にいた人が突然九州に…なんて普通にあります。
一般的には地方で経験を積んでから、東京や高等裁判所、最高裁判所とキャリアを積んでいくことが多いようです。
人事異動のタイミングは容赦なし?!
長引く裁判の場合、人事異動の関係で途中で裁判官が変わることも。(決められた人事異動の時期が優先)もちろんそれまでの審議内容は引き継がれますが、最終的なジャッチは判決を言い渡す裁判長にかかっています。
この裁判官の転勤を見越して、わざと審議を伸ばそうとする弁護士もいるとか、いないとか…。
Q5. 恨まれたりしない?普段は普通に生活してるの?
A. 普通に生活してます。
外食・買い物・家族でお出かけなど、他の職業と変わならい生活をおくっていらっしゃいます。
また官舎にお住まいの方が多いです。もちろん守秘義務だけはめちゃくちゃ厳しいです。
ただしあまりにも忙しすぎて(1度に何件もの事件を抱えている)、実際にはプライベートの時間を犠牲にされている方も多いと思います。
Q6. 女性の裁判官っている?
A. います。
若い女性裁判官も普通におり、女性検察官・女性弁護士も増えています。
とはいえまだまだ男性主体の世界です。

ご夫婦で裁判官という方もいらっしゃいます。
知るとより理解が深まる裁判傍聴
初めて裁判傍聴に行くと、「誰が誰だか分からない」となりがちですが、
- 法衣 → 裁判官(1番最後に専用口から入廷)
- 風呂敷持っている → 検察官(一般出入口から時間前に入廷)
- アタッシュケースやキャリー→ 弁護士(一般出入口から時間前に入廷)
この3つを覚えるだけで、相関図は一目瞭然です。
これから裁判傍聴を始める人はぜひ参考にしてみてください。
※この記事は、面白半分での傍聴をすすめるものではありません。
裁判は私たち一人ひとりが司法を見守る権利と責任をもつこと、報道では伝わらない事件の背景や、誰もが当事者になりうる現実を知ってもらうために書いています。
はじめて傍聴を考えている方の背中を、そっと押すきっかけになれば幸いです。
また傍聴の際は、モラルとルールを守りましょう。

裁判傍聴のリアルを描いたこちらの作品を観ておくと、より知識が深まります。
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